
萩・高杉家
天保十年の秋。長州・萩の城下に、一人の男児が生まれた。父は高杉小忠太。長州藩のなかでも上士に列する、れっきとした家柄であった。城に近い菊屋横丁に屋敷をかまえ、暮らしに事欠くことはない。生まれた長男は、のちに晋作と呼ばれる。高杉晋作、その人である。
同じ長州の空の下に、もう一人、のちに時代を揺らす男がいた。松本村の杉家——禄わずかな下級武士の出で、一家総出で畑を耕して口を糊した、吉田松陰である。やがて師となり弟子となる二人は、生まれた家の格からして、すでに対照をなしていた。一方は土の匂いのなかで、一方は城下のゆとりのなかで育つ。







